税金・社会保険

国民健康保険料が高すぎる個人事業主へ|負担を見直す考え方と選択肢

会社の手取り最大化診断|編集部

「今年の国民健康保険の納付通知を見て、思わず二度見してしまった」。個人事業主の方から、こうした声をよく伺います。事業が軌道に乗って所得が増えるほど、国民健康保険料は上限額に向かってぐんぐん上がっていきます。しかも、所得税のように控除を積み上げて減らすことが難しい仕組みになっています。この記事では、なぜ国保はこれほど重く感じるのか、その仕組みを整理したうえで、負担を見直すための考え方と選択肢を、保障や年金・扶養の扱いまで含めてわかりやすく解説します。

なぜ国民健康保険料はこんなに高く感じるのか

国民健康保険は、会社員が加入する健康保険(社会保険)とは別の制度で、個人事業主やフリーランス、退職後の方などが加入します。保険料の計算方法は市区町村ごとに異なりますが、共通しているのは「所得に応じて計算される部分」と「世帯の人数に応じて計算される部分」を組み合わせて算出される、という点です。

つまり、所得が増えるほど、そして家族の人数が多いほど、保険料は上がっていきます。しかも一定の上限(賦課限度額)に達するまで上がり続ける仕組みで、この上限額自体も、一般に年々引き上げられる傾向にあると言われています。

  • 所得が増えると保険料も増える(所得割)
  • 家族の人数が増えると保険料も増える(均等割)
  • 住んでいる市区町村によって計算方法や金額が異なる
  • 上限額に達するまで上がり続ける

特に注意したいのは、国民健康保険には「扶養」という考え方がない点です。会社員の健康保険なら、配偶者や子どもを扶養に入れても保険料は基本的に変わりませんが、国保では家族一人ひとりが被保険者としてカウントされ、その分だけ保険料が加算されます。子どもが生まれると保険料が上がる、というのは国保ならではの現象です。

節税をがんばっても国保が下がりにくい理由

「それなら控除を増やして節税すればいいのでは」と考えたくなりますが、ここに国保ならではの見落としやすい仕組みがあります。所得税や住民税は、所得からさまざまな所得控除(配偶者控除・生命保険料控除・小規模企業共済等掛金控除など)を差し引いた「課税所得」に対してかかります。ところが国民健康保険料の計算では、こうした所得控除の多くが反映されません。

税金と国保では「かかる元」が違う
項目計算のもとになる金額所得控除の効果
所得税・住民税所得から各種控除を引いた「課税所得」効きやすい
国民健康保険料基礎的な控除を引いた後の「所得」ほとんど効かない

その結果、「所得控除を積み上げて所得税はかなり抑えられたのに、国保の保険料はほぼそのまま」という状態が起こります。国保を下げるには、控除ではなく、計算のもとになる所得そのものの構造を見直す必要がある、ということです。ここが、個人事業主の国保対策が難しいと言われる根本的な理由です。

負担を見直す主な選択肢

国民健康保険の負担を見直すアプローチには、一般に次のようなものがあります。それぞれ効果の大きさも、向き不向きも異なります。

  • 国民健康保険組合(国保組合)への加入:同業種の事業者で構成される組合で、保険料が所得に関係なく定額の場合があります。業種ごとの加入条件があるため、該当する組合があるかの確認が第一歩です。
  • 世帯構成の見直し:二世帯で暮らしている場合など、世帯のまとめ方によって保険料の計算が変わることがあります。
  • 掛金が経費になる共済制度の活用:例えば経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)のように、掛金が必要経費になる制度は、所得そのものを圧縮するため国保にも効きうると言われています。一方、小規模企業共済やiDeCoのような「所得控除」型は、前述のとおり国保には反映されにくい点に注意が必要です。
  • 法人化して社会保険に切り替える:所得の構造そのものを変える方法で、条件が合えば影響が大きい選択肢です。次の章で詳しく見ていきます。
ポイント:どの選択肢も「制度の最新条件の確認」が前提 保険料の計算方法や各制度の取り扱いは、市区町村や年度によって変わります。この記事では考え方の枠組みをお伝えしていますが、実際に動く前には、お住まいの自治体や税理士・社会保険労務士など専門家に最新の取り扱いをご確認ください。

法人化すると「負担の構造」が変わる場合がある

個人事業主が法人を設立し、自分は法人から役員報酬を受け取る形にすると、加入する保険が国民健康保険・国民年金から、法人の社会保険(健康保険・厚生年金)に切り替わります。このとき何が変わるかというと、保険料の計算のもとが「事業の所得」から「自分が受け取る役員報酬の額」に変わるのです。

事業の利益が大きくても、役員報酬の設計しだいで社会保険料の計算のもとになる金額が変わるため、国保時代と比べて世帯全体の保険料負担の構造が大きく変わる場合があります。例えば、家族を扶養に入れられるようになる点も大きな違いです。

個人事業(国保)と法人化(社会保険)の構造比較
Before:個人事業主(国保+国民年金) ・保険料は事業所得に連動して上限まで上がる
・家族一人ひとりに保険料がかかる(扶養の概念なし)
・国民年金は定額で、配偶者の分も別途必要
・所得控除を増やしても国保はほぼ下がらない
After:法人化(社会保険+厚生年金) ・保険料は役員報酬の額をもとに計算される
・条件を満たす家族は扶養に入れられる場合がある
・厚生年金となり、将来の年金の枠組みが変わる
・傷病手当金など保障の内容も変わる

一般に、所得がある程度の水準を超えている個人事業主ほど、この構造の違いによる影響は大きくなりやすいと言われています。ただし、法人化には法人設立や維持のコスト、法人としての税務申告、社会保険の手続きなどが伴います。保険料だけを切り出して比べるのではなく、税金・維持コストまで含めたトータルで判断することが大切です。具体的にいくら変わるかは所得水準・家族構成・お住まいの自治体によって大きく異なるため、最新の制度にもとづいた試算を専門家に確認することをおすすめします。

保険料だけで決めない|保障・年金・扶養まで含めた総合判断を

負担の見直しを考えるとき、つい「保険料がいくら下がるか」だけに目が行きがちですが、健康保険と年金は、いざというときの保障と老後の生活を支える制度でもあります。切り替えによって変わるのは金額だけではありません。

  • 医療の保障:医療費の自己負担割合など基本的な給付は大きく変わらない一方、社会保険には病気やケガで働けないときの傷病手当金など、国保にはない給付がある場合があります。
  • 年金:国民年金のみの場合と厚生年金に加入する場合とでは、将来受け取る年金の枠組みが変わります。個人事業主には会社員のような退職金もないため、老後資金の準備という観点も欠かせません。
  • 家族の扱い:扶養に入れられるかどうかで、世帯全体の負担は大きく変わります。配偶者が働いているか、家族の人数は何人かによって、有利・不利は変わってきます。
ポイント:比べるのは「保険料」ではなく「世帯全体の手取りと保障」 判断の軸は、目先の保険料の増減ではなく、「世帯全体で手元に残るお金」と「万一のときの保障・老後の備え」を合わせた総合点です。保険料が下がっても保障や年金が手薄になっては本末転倒ですし、逆に負担構造の見直しで生まれた余裕を老後の積み立てに回す、という考え方もあります。

「形だけの法人化」には注意が必要

最後に、大事な注意点をお伝えします。法人化による社会保険への切り替えは、実態のある事業運営が前提です。保険料を下げる目的だけで、事業の実態が伴わない「形だけの法人」をつくることには、次のようなリスクがあります。

  • 事業実態のないペーパーカンパニーと見なされ、税務・社会保険の両面で問題になるおそれがある
  • 法人の設立費用・維持費用(税務申告や登記関連のコストなど)が削減効果を上回り、かえって損をする場合がある
  • 役員報酬の設計を誤ると、期待した効果が出ないだけでなく、資金繰りを圧迫することがある
  • 取引先との契約、屋号、許認可など、事業の周辺にも影響が及ぶことがある

また、こうした判断には「税金」と「社会保険」の両方の知識が必要ですが、税理士は税金の専門家、社会保険労務士は社会保険の専門家と、それぞれ得意分野が分かれています。片方の視点だけで判断すると全体の最適を見失いやすいため、両方を横断して見てくれる相談先を選ぶこと、そして着手前に費用体系が明確であることを確認するのが安心です。

国民健康保険の負担は、放っておいて軽くなるものではありません。一方で、仕組みを知り、自分の所得水準や家族構成に合った選択肢を検討すれば、見直せる余地が見つかる場合があります。まずは「自分の場合はどうなのか」を確認するところから始めてみてください。

ご注意 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・社会保険の判断を保証するものではありません。実行にあたっては、事業内容・契約状況・法人形態などにより結果が変わるため、税理士・社会保険労務士など専門家への確認をおすすめします。

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