社長の手取り

出張旅費規程で社長の手取りを増やす方法|非課税で受け取れるお金の仕組み

会社の手取り最大化診断|編集部

「役員報酬を上げても、税金と社会保険料でほとんど残らない」。そう感じている経営者の方は少なくありません。実は、報酬を上げる以外にも、社長個人の手元にお金を残す方法があります。その代表例が「出張旅費規程」の整備です。会社にとっては経費(損金)になり、社長個人にとっては税金も社会保険料もかからない形で受け取れる可能性がある。この記事では、その仕組みと、実行するときに欠かせない4つの要件を、できるだけ日常語で解説します。

出張旅費規程とは?「実費精算」と何が違うのか

出張旅費規程とは、会社の出張にかかるお金の取り扱いを明文化した社内ルールのことです。多くの中小企業では、出張の交通費や宿泊費を「実費精算」しています。つまり、かかった分だけ領収書を集めて、そのまま払い戻す方式です。

一方、旅費規程を作ると、実費の精算だけでなく「日当(出張手当)」を支払うことができるようになります。日当とは、出張に伴う細かな出費や負担に対して、あらかじめ決めた金額を定額で支払うお金です。ここに、実費精算にはない大きな違いが生まれます。

  • 実費精算:かかった金額をそのまま払い戻すだけ。個人の手元には何も残らない
  • 日当方式:規程で定めた金額を定額で支給する。実費との差額が個人の手元に残り得る

「出張に対して実費以上のお金を払う」という発想自体がない会社が多いのですが、旅費規程を整えることで、この日当という選択肢が使えるようになります。

会社と社長、両方にメリットがある仕組み

旅費規程にもとづいて支払われる旅費(交通費・宿泊費・日当)は、税務上、独特なポジションにあります。ざっくり言うと、次のような構造です。

旅費規程による日当の「二重のメリット」構造
会社側から見ると 規程にもとづく妥当な旅費は、会社の経費(損金)として扱われるのが一般的です。その分だけ会社の課税所得が小さくなり、法人税等の負担軽減につながり得ます。
社長個人から見ると 出張に通常必要と認められる範囲の旅費は、所得税法上「非課税所得」とされています。給与と違い、一般に社会保険料の算定対象にもなりません。

役員報酬を増やした場合、社長個人には所得税・住民税・社会保険料の負担が乗ってきます。ところが、適正な旅費規程にもとづく日当であれば、会社は損金・個人は非課税という形になり得るため、同じ金額でも手元に残り方がまったく違ってきます。

さらに、国内出張の旅費は一般に消費税の課税仕入れとして扱われるため、消費税の納税額の計算上もプラスに働き得ると言われています。法人税・消費税・社長個人の所得税と社会保険料。一つの規程が、複数の負担に同時に関わってくるわけです。もちろん、消費税の扱いは会社の課税方式(原則課税か簡易課税かなど)によって変わりますので、この点も含めて専門家に確認しながら進めるのが安全です。

例えば、年間50日の出張がある社長に、規程上の日当が1日2万円と定められていたとします。単純計算で年間100万円が旅費として支給されることになり、これが妥当な範囲と認められれば、会社の経費でありながら、個人には税金も社会保険料もかからないお金として受け取れる、という考え方です。あくまで例示であり、実際の取り扱いは条件によって変わりますので、最新の制度や個別の判断は税理士など専門家にご確認ください。

ポイント:報酬アップとの決定的な違い 役員報酬を年100万円上げても、税金と社会保険料が引かれて手元に残るのは一部です。適正な日当なら、その差し引きが基本的に発生しない構造になり得る。ここが旅費規程の最大の特徴です。

「いくらまでOK」という金額は決められていない

では、日当はいくらまでなら認められるのでしょうか。実は、税法や通達に「日当は1日いくらまで非課税」という具体的な金額は書かれていません。所得税基本通達では、非課税とされる旅費かどうかを判定するときの考え方として、おおむね次の2点が示されています。

  • 役員から社員まで、社内全体を通じてバランスの取れた基準で計算されているか
  • 同業種・同規模の他社が一般的に支給している金額と比べて妥当か

つまり「社長だけを極端に優遇する内容になっていないか」「世間相場から見てやり過ぎていないか」という視点で判断される、ということです。逆に言えば、金額の明記がないからこそ、日帰り出張で1回数万円というような明らかに過大な設定をすると、非課税として認められないリスクが高まります。一般に、社長の宿泊出張の日当で1万円台〜2万円程度が一つの目安と言われることがありますが、これも業種や会社規模によって変わるため、設定前に専門家へ確認しておくと安心です。

否認されないための「4つの要件」

旅費規程による日当は、形だけ整えても意味がありません。税務調査で問題にならないためには、次の4つがそろっていることが大切です。

要件内容よくある不備
1. 出張の実態実際に業務目的の出張が行われていること行っていない出張への支給、私的な旅行との混同
2. 旅費規程の整備支給の根拠となる規程が文書で存在すること規程がないまま日当だけ払っている
3. 金額の妥当性社内バランスと世間相場から見て適正な金額であること社長だけ突出して高額、相場からかけ離れた設定
4. 記録の保存出張日・行き先・目的・支給額などの記録が残っていること出張報告書や精算書類がなく、実態を説明できない

この4つは、どれか一つ欠けても弱くなります。「規程はあるが出張報告書がない」「出張はしているが規程がない」という状態では、いざというときに説明ができません。逆に、4つがそろっていれば、日当の支給根拠を筋道立てて示すことができます。

特に見落とされがちなのが、4つ目の「記録」です。残しておきたい書類は、例えば次のようなものです。

  • 出張申請書・出張報告書(日付、行き先、目的、面談相手や訪問先など)
  • 旅費精算書(交通費・宿泊費・日当の内訳と支給額)
  • 移動や宿泊の事実がわかる資料(乗車券の控え、宿泊の領収書、訪問先とのやり取りなど)

こうした記録は、税務調査のときに「本当に出張があったのか」を示す唯一の証拠になります。毎回の出張ごとに数分で書ける簡単な書式で構わないので、規程を作るのと同時に、記録のひな形も用意しておくことをおすすめします。

ポイント:規程・実態・金額・記録はワンセット 旅費規程は「作って終わり」ではなく「規程どおりに運用し、記録を残す」ところまでがワンセットです。出張のたびに報告書と精算書を残す習慣を、規程と同時に作りましょう。

ひとり社長でも作れる?規程づくりの実務ポイント

「出張するのは社長の自分だけだから、規程を作っても意味がないのでは」と思われるかもしれません。実際には、ひとり社長の会社でも旅費規程を作ることはできます。その際のポイントは次のとおりです。

  • 社長・役員・管理職・一般社員など、複数の役職区分を設けて段階的に金額を設定する(将来の採用を前提とした建て付けにしておく)
  • 日帰り出張と宿泊出張で区分を分け、距離や宿泊の有無に応じた基準を明記する
  • 交通費・宿泊費・日当のそれぞれについて、支給方法(実費か定額か)を決めておく
  • 金額は「自分の役割や拘束時間から見て説明できる水準」に抑える。後ろめたさを感じる金額設定は、そもそも妥当性に疑問がある証拠と考える

役職ごとの段階設定は、先ほどの「社内バランス」の要件を満たすうえでも重要です。たとえ今は社長しか出張しなくても、規程の建て付けとして全社員に適用されるルールになっていることが、妥当性の裏付けになります。

また、規程は一度作ったら終わりではありません。事業の内容や出張の頻度が変わったとき、社員を採用したときには、実態に合わせて見直しましょう。実態と規程がずれたまま運用を続けると、せっかく整えた根拠が弱くなってしまうためです。

まとめ:小さな社内ルールが、手取りの構造を変える

出張旅費規程は、書面を整えるだけで始められる、比較的取り組みやすい手取り対策です。最後に要点を整理します。

  • 旅費規程を作ると、実費精算だけでなく「日当」という定額支給が可能になる
  • 適正な旅費は、会社にとっては損金、社長個人にとっては非課税という構造になり得る
  • 非課税となる金額の明確な上限はなく、社内バランスと世間相場で妥当性が判断される
  • 実態・規程・金額の妥当性・記録の4要件をそろえることが欠かせない
  • ひとり社長でも、役職区分を設けた規程にすることで導入は可能

ただし、効果の大きさは出張の頻度や報酬水準、会社の状況によって人それぞれです。また、税務・社会保険の取り扱いは改正されることがあります。導入の際は、最新の制度を踏まえて税理士・社会保険労務士などの専門家に確認しながら進めることをおすすめします。

ご注意 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・社会保険の判断を保証するものではありません。実行にあたっては、事業内容・契約状況・法人形態などにより結果が変わるため、税理士・社会保険労務士など専門家への確認をおすすめします。

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